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Research #01

2023年11月14日(火)佐伯市にある炭焼き小屋「寺嶋林産」へ大分県森との共生推進室 森づくり推進班の玉田さんと一緒に訪ねてきました。

私はこれまで限界集落にある地域資源を映像に残し、後世に伝える映像表現の手法の確立を目指し、研究として福井県の里山で森林を守る活動において重要な炭焼き小屋での活動を映像作品として制作してきました。そこでこの秋、大分に住まいを移したことをきっかけに、大分県内でも限界集落や、炭焼き小屋の取材をしていきたいと思い、NBUの広報を通じて先述の森づくり推進班の玉田さんをご紹介頂き今回の取材につながりました。

取材に応じていただきました「豊後備長炭 寺嶋林産」の寺嶋直文社長は、先代の跡を継いで現在の炭焼きを生業にされています。こちらの炭はいわゆる「白炭」の備長炭製造が主要な事業で、先代の時代には創業当初、パルプ製紙が主力で売上が高かったそうですが次第に備長炭が主力となったそうです。なぜ炭焼き小屋の跡を継いだのかたずねたところ、昔から父親の仕事を見ていたし、自然とやりたいなと思ったということです。ただ、決して儲かる仕事ではなく手間がかかる仕事ですが、備長炭の供給を止めるわけにいかないと仰っていました。


寺嶋林産の備長炭

寺嶋林産では9人の従業員のうち、炭焼きを主に従事されている従業員さんは2名で行っています。「炭焼きづくりはまさに職人の仕事で、窯の壁を触って温度がわかる。9基も炭焼きの窯があるのですが、その窯の分だけ個々に特性が違う窯の癖を経験値で扱うことができる焼き手の技術にはセンスも重要である。また、樫の木の原木を入手することも困難で、なぜなら杉が植えにくい岩場や崖などに樫の木は生育していることが多いため、切り出し作業が困難で原木の入手にもコストがかかる」など、炭焼き小屋運営の大変さを教えてくださいました。

熊本には30基も窯を持つ大規模な黒炭の製造販売事業所もあるそうですが、寺嶋林産では備長炭製造の際にできる「木酢液」をそちらの事業所に収めているそうです。また製造した備長炭は佐伯市内や大分県下をはじめ各地の焼鳥屋やうなぎ屋さん、料亭などに小売販売をするそうですが製造した備長炭の8割は関東圏の問屋に卸しているそうです。備長炭は火持ちも長く、においもでないため、高級料理店など飲食店で使用されるため需要がある商品ですが、担い手を新たに確保することは原木の入手も含めてなかなか困難な状況だということでした。

炭の販売においてはコロナ禍以来、郊外でキャンプするなど、アウトドアでのニーズの高まりや、エシカル商品への興味関心の高さも高まりもあった一方、現在の日本ではロシア・ウクライナやイスラエル・ガザ地区の戦争などによる原材料費の高騰や、円高の追い打ちもあり、一旦アウトドアブームも落ち着いてしまいましたが、飲食店などが主に求める備長炭は一定の需要があるため安定的に供給する事業者を守り続ける必要があります。こういった職人技の昔ながらの製法で手間暇のかかる備長炭などの製造業にはもっと人手が必要ですが、担い手を雇うだけの売り上げが立たなければ、技術の継承も事業の継続も難しくなってしまいます。今いる職人さんの技術継承は急務であるため、人口減少社会の今、日本全国に同様な問題を抱える地域を取材し、炭焼き小屋運営の取り組み成功事例を研究しながらこの地域にも還元できる手立てを考えていきたいと思いました。今後、寺嶋林産さんで新たに映像を記録させていただき、映像作品としてもまとめ情報発信していきたいと思います。

豊後備長炭 寺嶋林産MAP

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豊後備長炭 寺嶋林産
http://www.saiki.tv/~rinsan1213/index.html

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